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教員同士の紙上座談会

次世代を担う社会福祉のあり方とは

  • 栃本一三郎

    総合人間科学部
    社会福祉学科教授
    栃本一三郎

  • 森将知(1999年卒業)

    社会福祉法人
    さざんかの会事務局長
    森将知(1999年卒業)

  • 伊藤順子(2000年卒業)

    厚生労働省
    職業安定局書記室
    伊藤順子(2000年卒業)

社会福祉はクリエイティブな仕事。だからこそ総合大学で真の教養を。

――まず、簡単な自己紹介からお願いします。

栃本
私自身、上智大学社会学部の出身で、旧厚生省や国の研究機関で社会福祉政策に関わった後、10年前に母校へ戻りました。総合人間科学部が発足した3年前から社会福祉学科の学科長をつとめています。
栃本ゼミの1期生です。現在は社会福祉法人で知的障害者の方を対象とする小規模作業所の施設長と事務局長を兼務しています。
伊藤
私も先生のゼミ生で、卒業して旧労働省に入省しました。現在の所属部署は厚生労働省の職業安定局です。
――卒業生の二人は社会福祉施設と中央官庁、いわば両極に位置することになりますね。
栃本
出席日数も好対照でしたが(笑)。実はそこが上智の特色。「60日間実習」に象徴される本学の目標は「現場で良い仕事ができる人材の育成」ですが、同時に社会福祉全体を幅広く学ぶことも重視します。まさに「現場から行政まで」、偏りのない教育研究を実践している全国でも数少ない福祉系学科と言えるでしょう。
伊藤
私も入学当初は現場の対人サービスに興味をもっていました。でも上智で勉強するうちに、行政の立場で福祉に関わる道もあると知り、途中から国家公務員試験を目指すことにしたんです。
栃本
確かに、最初から国家公務員志望の学生は上智を選ばないよね(笑)。
伊藤
実際、現場を経験せずに入省していた職員は多いと思いますね。
私の場合は逆に、現場で働く人間の視点から幅広い知識や理論の必要性を感じます。現場で直接、福祉や介護に携わる人はどうしても目の前の問題や仕事に追われがちです。でも、現場サービスの向上には政策面の議論や科学的な判断、時には経営センスも必要。今、現場をマネジメントする立場になって、上智で学んだことの大切さをあらためて再確認しています。
栃本
それは上智がリベラルアーツを標榜する総合大学であることも大きいと思うね。社会福祉だけでなく、その気になれば哲学も心理学も経済学も学べる。在学中は実感できなくても、10年後、20年後にはそれが必ず、生きる糧として役立つはずですよ。

目先にとらわれない真の福祉国家の実現のために。

――大学時代の学びで今、一番役立っていることは何でしょう。

伊藤
今は労働関係の部署なので直接的に福祉と関わることはありませんが、先生の授業で習った社会福祉における運営管理のあり方、例えばPDCAサイクル、つまり計画(Plan)・実行(Do)・評価(Check)・改善(Act)というマネジメント手法は、どんな仕事をする上でも必要だと感じます。学生時代はそこまで理解してませんでしたけど。
栃本
在学中にすべて理解できるような教育はダメなんですよ(笑)。従来の一般的な福祉教育は即戦力として役立つ技術ばかり教えてきた。でも本当に必要なのは、何年か経って「あ、これなんだ」と気づくこと。上智大学ではそんな奥行きのある福祉教育を実践してきたと自負しています。
先生の言う通り、いろいろな後輩たちを見ていると「教育の違い」を感じますね。福祉の仕事は今後、どんどん変化していくと思いますが、それに対応できるのか、疑問に思う人も少なくない。今、福祉の現場では制度や環境が悪いと批判するだけでなく、自分たちで新しい状況を創り出す力、いわゆるクリエイティビティを備えた人材が求められているように思います。
栃本
そう。福祉は本来、とてもクリエイティブな仕事なんですよ。日本の社会福祉はこれまで「官」主導、言わば中央集権的に行なわれてきたため「民」が育っていない。二人が指摘した行政と現場の乖離(かいり)もそこに原因があります。そういう状況を打破して「官・民・学」が一体となった社会福祉を創造する、クリエイティブな人材の育成が私たち教育・研究機関の大きな課題ですね。
――これから社会福祉学科を目指す高校生の皆さんに何かメッセージはありますか。
これからの社会福祉にはみずから「理念」を築ける人が必要。目先の技術や資格だけでなく、しっかりとした教養と理論を上智大学で身に付けてほしいと思います。
伊藤
実を言うと大学時代は授業には出ていたのですが、自分で考えて勉強するということをしていなくて。私は悪い例だと思うんです(笑)。後輩の皆さんは授業以外の勉強や、勉強以外にもいろいろな経験もして、人間としての幅を広げてもらいたいですね。
栃本
日本はすでに今後65歳以上人口が40%を超える、世界でも類を見ない高齢化社会に突入しています。社会福祉はますます重要な課題になりますし、そこに関わる人材には既存の専門知識や技術に加えて、豊かな創造力と真の教養が求められるでしょう。そのための環境が揃った上智大学で是非、次代を担う社会福祉を学んでください。

総合人間科学部

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